木内式会計ワークショップ誕生のキッカケ
僕が会計を勉強する必要に迫られたのは、独立して半年後、
人生で初めて「会社の事業再生」という仕事に携わった時でした。
それまでのサラリーマン時代から、PL(今から思えば、
当時のPLは管理会計上のPLでした)には慣れ親しみが
ありましたが、ぶっちゃけ、BSは、それまで見たことも
使ったこともありませんでした。
そこで、BSを読みこなせるようになるため、周りの財務経理マンや税理士の先生など、
いわゆる「会計のプロ」に勉強法を伺ってみることに。
全員が口をそろえて言いました。
「まずは簿記から勉強するといいですよ!」
というわけで、手に取ったのが簿記3級の参考書。
その最初の章が「仕訳の仕方」でした。
「?・・・、簿記とは? こんな回りくどいことをしなくては・・・?」
仕訳の勉強する時、大抵の人がそう思うように、
僕の脳内にも「?」がいっぱいになりました。
というのも、当日の仕事で必要なスキルは、
すでに出来上がったBSを観て「会社の痛み具合(健康診断)」を判断すること
新しい事業計画の実現が「どのようにBSを変えるのか(状態予想)」を視ること。
でも、BSを観る(診る・視る)スキルとBSを作るスキル(≒簿記)とは違うはずです。
これでは効率が悪すぎる!一から覚えている暇はない!
必要に迫られたせいか、『良い子的素直さ』が欠落しているせいか、
僕は、一切簿記を勉強しないで、ショートカットで会計をマスターすると決めました。
なあに、きっと、僕と同じニーズの人は多いはず。
どこかにいいノウハウ本があるはずだ、と甘く見ていました。
ウェブを情報検索してみたり、アマゾンや八重洲ブックセンターで
いい本がないか探してみたのですが、不思議なことに、
僕のニーズ(単刀直入に会計を高速に理解する)にピッタリくるモノには
出会うことができませんでした。
そこで、僕はまずは全体像を掴もうと、本で集めた断片的な知識をもとに、
大きな模造紙の上に大きなBSとPLを描き、その上に、
印刷した自社の残高試算表を大きな科目ごとにはさみで切った短冊を、
それこそ、勘定科目の紙切れをジグソーパズルのように貼り合せて、
会計の全体像を表すモデルを描いていきました。
しばらくは???が続きました。
するとある日、PLを通常の上下に計算する書式ではなくて、左右に描く構図を見た時、
いくつかの専門書に書いてあったBSとPLがくっついているというヒントが、
ピーン!と来ました。これなら縦にキレイにくっつく!
そこから、今も利用しているBSとPLを縦に並べて一つにした、あのような図形の中に、
自社の勘定科目の紙切れを全部貼りつけるまでは、ものの数分でした。
そして、貼り付けるのが終わるか終らないか、その瞬間。
突然、ひらめききました。
BSとPLは縦にくっつくんじゃなくて、
「もともと一つのものだったんだ!」
と、直感したのです。
「キモはこれだったのか!?」
直感にワクワクした、その気持ちが覚めないうちにと、
自分が会社を作ってからのお金の流れを、
この一つになったBSとPLの図形に中に、
ポストイットを使って再現してみました。
すると、最初はバラバラだったBSとPLに関する知識がつながりだしたのです。
この瞬間、僕は会計システムの本質を理解しました。(少なくとも僕はそう思っています)
こうして出来上がったのが、このダイアグラムです。
上記の直感的な体験を通じて、会計と財務に習熟していった頃、偶然、僕は企業再生の仕事の合間に、会計について教える機会に恵まれました。
舞台は、西岡塾というInnovativeなミドルを育成するための異業種交流型の自己変革プログラムでした。
当時、僕はこの塾の1期生だったのですが、
企業財務(Corporate Finance)を担当されていた大学教授の講義を、
より理解するための対策として、草の根的に有志が集まり、
輪読形式の勉強会をスタートさせたのが、そのキッカケでした。
すると、これがなぜか会計に苦手意識を持った入門者に限って評判がよく、
以来、財務の敷居を低くするというミッションで、
その後も「財務補講」として定着していきました。
何が好評だったのでしょう?
なぜ、入門者に限って評判がよかったのでしょう?
本当のところは分かりませんが、僕はこう思っています。
それは、会計や財務に苦手意識を持っていた僕が、
習熟していった実話(エピソード1、2)に基づき、
同じような体験を感覚的に追体験してもらえるように
ワークショップを設計したからではないかと思うのです。
この順番なら、このやり方なら、僕にだって理解できたんだし、
きっと誰でも、とっつきやすいんじゃないか、分かりやすいんじゃないか、
最初はこんな安直な発想で、コンテンツを作ったのですが。
やがて、口コミで依頼が集まるようになり、
これまでに500人を超える方々にワークショップを提供することができました。
すると、この500人を超えるワークショップ自体が、
素人レベルの学習者に適切な内容かどうかの実証実験の役割を果たし、
受講者からのフィードバックが、1つ1つ難しい部分をシンプルに改良していきました。
きっと幸運だったのでしょう。
この2つの出来事が同時代にリンクして経験できたからです。
こうして、木内式『右脳でわかる会計と財務のワークショップ』は、
僕自身が会計アレルギーを解消していった実体験をケース教材にした、
ゲーム形式のワークショップを楽しみながら、直感的に、右脳を使うことで、
会計や財務の素人が、単刀直入に、かつ極めて短時間のうちに「会計システムの本質」を
理解できる、現在のモノに仕上がっていったのです。(今も改良中ですが)